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未成年が相続人の時の不動産相続②
カテゴリ:相続不動産・不動産FPブログ  / 投稿日付:2020/02/23 00:00

当社主催の相続セミナーの後、個別相談を受けました。40代の女性です。ご主人が若くして病気で亡くなりました。相続の状況は次の通りです。

■被相続人:ご主人 ※亡くなった方を被相続人と言います

■相続人:40代の妻、18歳の娘

■相続人財産:自宅マンション、預貯金 ※相続税は基礎控除以下なので非課税でした

■遺言:なし

未成年者がいる時の相続相談は、ここ1年で3件目です。ご相談が多いのでもう一度書こうと思いました。

幸いにも自宅マンションについては、住宅ローンが残っていましたが、被相続人が通常通り団体信用生命保険に加入していたので全額保険適用で住宅ローンを完済することができます。

18歳の娘さんは全財産がお母さんの財産と思われていますし、それが当然だとお考えでした。しかし、遺言が無いため相続人2人で遺産分割協議を行う必要がありますが、相続人の中に未成年者がいた場合、その手続きには未成年者の代わりに手続きする者がいなければなりません。未成年者には代理人を立てる必要があります。

であれば、親権者である親がすれば良いのではと思われた方もいるかもしれませんが、その親自身も相続人になっている場合、「利益相反行為」といって法律上、代理が認められていません。利益相反行為とは、一方の利益が生じると同時に自身が代理した一方に不利益が生じる行為のことです。

この場合、「特別代理人」の選定を家庭裁判所に申し立てる必要があります。特別代理人は未成年者に代わり、遺産分割協議や手続書類の記入・捺印などを行うことになります。※未成年者であっても結婚しているなど、成人とみなされる場合もあります。

遺言がない場合、民法で法定相続分が決められている以上、家庭裁判所は弱い立場の未成年者の権利を奪うような内容の遺産分割協議書を嫌います。子供は遺産分割する能力がないため法律上の相続分は子供に与えるように考えます。

相続した財産の中に不動産がある場合は、普通に考えて親に名義変更をするのが妥当と思われる方が多いと思いますが、この場合には未成年者が法定相続分を受ける権利を失う側となりますので、家庭裁判所に対して、親に名義変更をする合理的な理由を示さなければなりません。単純に、親に不動産の名義変更をするだけの遺産分割協議書(案)を作成したのなら、家庭裁判所から容易に認めません。この場合、子供との共有名義になる事が多いと思います。

今回の相談の場合、すぐに自宅マンションの相続登記をすれば、結果的に子供との共有名義になる可能性が高いでしょう。煩雑な手続きと費用も必要になります。当分の間、不動産を処分することは無いということでしたので、18歳の娘さんが成人になるのを待って遺産分割協議することをお勧めしました。相続税の納税期限は10ヶ月以内と期限がありますが、遺産分割については期限はありません。

子供が未成年の場合、遺言書を作成ことも相続対策の一つだと思います。公正証書遺言であれば費用がかかりますが、「自筆証書遺言」であれば、紙とペン(鉛筆でも有効ですが…)が有れば、無料で作成できます。押印は必須ですが実印である必要はありません(指印でも有効)。

不動産が夫婦共有になっていたり、奥様にも資産がある場合は、夫婦でお互いに書き合えばよいと思います。子供が自立すれば、その時の気持ちで何回でも書き直せます。

最後に余談ですが、親子一緒に相続放棄する場合に限り、特別代理人の選任は必要なくなります。そもそも親が未成年者の法定代理人としての権限を行使できない理由は、利益相反行為にあります。一緒に相続放棄するのであれば、そこに利益相反は生じないため、わざわざ特別代理人を選任させる必要がなくなります。

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